在宅も長くなり、外出も満足にできずにコロナ関連のニュースが増えてくると、取り上げるトピックも偏ってくる。
コロナ真っ只中、良くも悪くも煽りを受けている業種は多いと思う。
店を閉めざるを得ず、未来どころか今月を生き抜くのに知恵を絞らないといけないものもあれば、思わぬ需要拡大に嬉しい悲鳴をあげるものもある。
それらを俯瞰的にみて、withコロナ、afterコロナというワードが散見されるようになってきた。
簡単に言えば、コロナウィルスが猛威を奮っているこの状況下(withコロナ)、やがて収束した後の世界(afterコロナ)のことだ。
用例として「withコロナの働き方、afterコロナの働き方」のように使われ、主に経済的予測の文脈が多い。もっと身近なトピック…例えばwith/afterで外食業界が変わる、人とのコミュニケーションが変わる、みたいな使用例もあるだろう。
前書きが長くなったが、今回気になったのは"with"コロナだ。
わかりやすく書き直すとWITHコロナ。
そう、WITH。
義務教育で習った英語テキストを思い出してもわかるように、このコロナ騒動が起きる前/後を言い表すならbefore/after。ちょっと言い換えるとpre/postも当てはまる。誰それの後釜(ポスト●●)は誰だ、などの文脈でも見かけるポストだ。
それは良いとして、with、とは?
コロナの最中なら、duringではないのだろうか。
長ったらしく言い換えると、in the time ofも間違いではないだろう。
しかし、withコロナ、とは?
前後、と対比してなぜ"と共に"なのだろうか。
そもそもwithの意味は
今回もalcの英和辞典に登場してもらおう。
with
- ~と一緒に、~と一体になって、~と共に、~を相手にして、~と一緒に暮らして
・I'll be right with you. : すぐ戻ってきます。 - ~に雇われて、~に勤務して、~の一員で
・I have been with ABC Co. since it was founded ten years ago. : 創立以来10年間、ABC社に勤務してまいりました。
・Who are you with? : お勤めはどちらですか。 - ~と考え方が一体となって、~と同意見で、~に賛成して、〔人の話を〕理解して、~に味方して◆【反】against
・I'm with you. : あなたに賛成です。/同感です。◆相手の意見や気持ちに対して強く同調するときの砕けた表現。 - ~と時間的に一体となって、~と同時に、~につれて、~が同時に起こって、~しながら、~した状態で
・Don't sit with your legs crossed on a crowded train. : 満員電車の中で脚を組んで座るな。
・He is listening to the music with his eyes closed. : 彼は目を閉じて音楽に聴き入っている。 - ~と自分の体が一体になって、~を身に着けて、~を備えて、~を持っている、手元に~がある、~を持って、~があれば、〔道具などを〕使って
- ~と物理的に一体となって、~が付いて、~を含んで◆【反】without
- ~が原因で、~のために、~のせいで、その上
withコロナ、の用例としては4に該当するだろう。「~と時を同じくして」のニュアンス。
つまり「コロナと時を同じくして」、「コロナ状況下で」という意味合いでwithコロナというワードが使用されていると思われる。
ただ、4の意味で使うとしたら名詞単体では使われず名詞+形容詞がセットになるので、文法的にはwithコロナ(with Corona/the coronavirus)は「コロナと時を同じくして」という意味は、正確には持たない。
これに照らし合わせると、withコロナはいわゆる和製英語なのではないかと思われる、実際、with Corona (/with coronavirus) 用例で記事は見当たらない。
ちなみに、afterコロナに関しては問題なさそうで、postコロナとセットで登場している記事がヒットした。
In fact, just today there were many examples of life A.C. (After Corona).
withコロナの代用は
「コロナ情勢下で」を表現するならば、duringが該当すると思われる。
ただしduringの後には期間を表す名詞が来るのが常なので、during Corona では不正確。
強いて言うならば、during the coronavirus outbreak /during an outbreak of the coronavirus:「コロナ(ウィルス)の発生中に」という表現になる。
結論:語感重視なのでは
正確にduring を用いると長くなるし、何より頻出しづらいのは事実。
コロナ中、コロナ後に何が起きるのか、どう変わるのか、といった内容のほうが重要なのだから前置詞1つで片づけたいのが本音で、この和製英語が出てきたのだろう。
しかし、和製英語はしばしば文法どころか元々の意味あいすら捻じ曲げるところが厄介である。
例えば映画でも、日本では「ダークナイト ライジング」で知られるが原題は「The Dark Knight Rises」である。
24のジャック・バウアー役でも知られるキーファー・サザーランドが主演を務め話題になったNetflixのドラマ「サバイバー」も、原題は「Designated Survivor」である。
劇中でも触れらているが、テロによるホワイトハウス攻撃後、意図せず指定生存者(=Designated Survivor)とされていたキーファー・サザーランドが大統領職に就くところから物語がスタートするのであって、単にSurvivorではテロ攻撃そのものから生き残った主人公かのような印象を与える。これではただの24である。
正しい文法表現より、リズム感、言いやすさを重視することの多い和製英語。
ベットボトルみたいに「そもそも違う!」ならまだ見分けがつくが、原語のニュアンスを若干残しているのはなかなかにヤラシイものだ。
ということで、今後の経済的予測か?と期待させつつ今回も英語エントリーでした。